英文スタイルガイド解説(23):使わない英語【R〜T】

日本語ネイティブ向け英語スタイルガイドの「IT英語スタイルガイド」も公開しています。まとまった情報が必要な場合にご参照ください。

Googleが公開している開発者向け英文スタイルガイドから項目を1つ取り上げて紹介します。スタイルガイドは基本的には書く際に利用されますが、読む際にも参考になります。

記事の英語難易度は「中〜上級」です。


Googleスタイルガイドでは、使わない(禁止や非推奨)としている英語表現を掲載しています。そのうち日本語母語話者も用いそうな基本的な表現を選んで解説します。なおサンプル英文はGoogleのものです。

今回はRからTまでを取り上げます。

参考URL:https://developers.google.com/style/word-list#letter-r (2021-10-15閲覧)

R

使わない英語解説
real time/real-time名詞は「real time」、形容詞は「real-time」とする。例:
◯:We report on system health in real time.(名詞)
◯:We offer real-time reporting.(形容詞)
regex正規表現のこと
使わない。「regular expression」とする
repoレポジトリのこと
使わない。「repository」とする

S

使わない英語解説
scalescaleの1語で「大規模」や「拡大する」の意味で使わない
もともとscaleは「規模」や「規模が変わる」という中立的ニュアンスなので、largeやsmall、upやdownなど程度に関する言葉をきちんと補うようにする。例:
◯:The system performs better at a larger scale.
✕:The system performs better at scale.
◯:The system scales up quickly, but it scales down more slowly.
✕:The system scales quickly.
sexy使わない
fast、powerful、elegantなど、具体的に魅力を伝える言葉を使う
she(her、hers)状況に応じて「単数のthey」を使う
Gの「gender-neutralな(具体的な性別と関係しない)he/his/him/she/her」の項目を参照
should一般的には避ける
shouldは推奨などの意味があって曖昧さが残る。そのため状況に応じて明確に書く。例:
・操作が必須:mustを使うか、命令文で書く
・操作が推奨:「We recommend …」や「<社名> recommends …」を使う
・操作が任意:canを使う。例えば「You can also use approach B to solve the same problem.」
・結果が予想できる:結果を記述する。例えば「The process returns 10 items.」
・結果に可能性がある:mightかcanを使う。例えば「The process can take about 30 minutes.」
・状態が事実:「The value should be true.」とは書かず、義務なら「You must set the value to true.」、記述なら「The server sets the value to true.」、操作指示なら「If the value is false, follow these steps to change it to true.」などとする
sign-in/sign in名詞と形容詞は「sign-in」、動詞は「sign in」とする
sign into「〜にサインインする」の意味では「sign in to」とする。「into」と1語ではなく「in」と「to」である点に注意
sign-out/sign out名詞と形容詞は「sign-out」、動詞は「sign out」とする
since理由を表す場合はsinceではなくbecauseを使う
sinceは時間の始点(〜から)も表すので、誤読される恐れがある
slave使わない(奴隷を表すため最近は英語圏で避ける傾向。Mの「master」項目も参照)
文脈に応じて「worker」 や「replica」とする。また組み合わせとして次が例示されている。
primary/secondary、primary/replica、original/replica、controller/worker、initiator/responder、mixer/leaf、aggregator/collector、publisher/subscriber、leader/follower、active/standby
smartphoneGoogleでは使わないとしている
代わりに「mobile phone」や「phone」を使う

T

使わない英語解説
terminate停止の意味では使わず、代わりにstop、exit、cancel、endなどとする
(ただしコマンドや電話など、専門用語として確立している場合は除く)
text box、textboxGoogleでは「box」を使うとしている。例:
・In the Owner box, enter your name.
・In the Name box, enter wsfc-1.
tl;dr「To summarize …」などに書き換える
なお「tl;dr」は「too long; don’t (didn’t) read」の略。文字通りだと「(記事などが)長すぎるので読むな」という意味。そこから「要約したこっちを読め」のニュアンスが出る
touch screen「touchscreen」と1語にする
type一般的に「入力する」を表す場合は「enter」を使う
厳密に言うとtypeは「キーボードで入力する」意味なので、ペーストや音声入力などは含まれなくなってしまう

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なお「使わない英語」の全ページは下記の通りです。

英文スタイルガイド解説(20):使わない英語【A〜D】
英文スタイルガイド解説(21):使わない英語【E〜I】
英文スタイルガイド解説(22):使わない英語【J〜P】
英文スタイルガイド解説(23):使わない英語【R〜T】
英文スタイルガイド解説(24):使わない英語【U〜Z】

[筆者紹介]

西野 竜太郎

Ryutaro Nishino

翻訳者/情報技術者/IT英語専門家

訳書に『血と汗とピクセル』、『リセットを押せ』、著書に『アプリケーションをつくる英語』(第4回ブクログ大賞)、『ITエンジニアのための英語ライティング』、『ITエンジニアのための英語リーディング』、『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』など。
産業技術大学院大学修了(情報システム学修士)、東京工業大学大学院博士課程単位取得(専門は言語学)。TOEIC 985点。
東京通信大学外部講師。

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