英文スタイルガイド解説(27):注意事項の書き方

日本語ネイティブ向け英語スタイルガイドの「IT英語スタイルガイド」も公開しています。まとまった情報が必要な場合にご参照ください。

Googleが公開している開発者向け英文スタイルガイドから項目を1つ取り上げて紹介します。スタイルガイドは基本的には書く際に利用されますが、読む際にも参考になります。

記事の英語難易度は「中〜上級」です。


マニュアルなどでは「注」や「警告」を書くことがあります。今回はそういった注意事項の書き方です。

URL: https://developers.google.com/style/notices (2022-6-26閲覧)

注意事項を書くケース

重要または有用な情報を提供する際、本文とは別に注意事項として掲示できます。ただし、ユーザーは自分に関連がなさそうな要素は読み飛ばすようです。そのため、注などとして載せるか迷う場合、まず本文にした後、本当に必要であれば別途注意事項にするとしています。

また、あまり注意事項が多いと目立たなくなるので、多用しすぎないようにします。

注意事項の種類

下記の「Note」、「Caution」、「Warning」、「Success」の4種類を使うとしています。

Note

補足やコツに使います。ユーザーにとって有用な情報で、重大とまでは行かない情報です。

▼Noteに記載される例文:(※以降、英文はすべてGoogle)

  • Generating excessive amounts of traffic to external systems can resemble a denial-of-service attack.
  • 外部システムに対して過度なトラフィックを送ると、DoS攻撃のようになる恐れがあります。

日本語だと「注」、「注意」、「注記」、「留意」、「メモ」、「補足」などの訳語が当てられます。ただし「注意」あたりだと次のCautionと訳語が重複するかもしれません。もしマニュアルを日英翻訳をするのであれば、訳語は事前に調整しておいた方がよいでしょう。

Caution

注意して進めるようユーザーに伝えるのに使います。

▼Cautionに記載される例文:

  • We don’t recommend using a broad 0.0.0.0/0 range that would allow all traffic.
  • あらゆるトラフィックが許可され得る、レンジの広い0.0.0.0/0を使うことは推奨されません。

日本語だと「注意」や「警告」といった訳語が使われます。やはり次のWarningの訳語と重複する恐れはあるので、事前調整は不可欠です。

Warning

cautionよりも強いニュアンスです。してはいけない操作や、元に戻せない恐れのある操作に使います。Warningを無視した場合、経済的な損害やセキュリティー違反といった結果を招く可能性があります。

▼Warningに記載される例文:

  • Don’t put a password on the command line; doing so is a security risk.
  • コマンドラインにパスワードを入力してはいけません。セキュリティー上のリスクがあります。

日本語だと「警告」、「注意」、場合によっては「危険」といった訳語になります。

Success

操作が成功した場合や、エラーがない状況で使います。インタラクティブなまたは動的なコンテンツで使い、静的なコンテンツでは使いません。

▼Successに記載される例文:

  • You’ve successfully deployed an application to GKE.
  • 正常にアプリケーションをGKEにデプロイしました。

Noteの使い方

使える条件

次に挙げる条件がすべて満たされる場合、「Note」を使うとしています。

  • ユーザーの今の操作に関連しているが、必須ではない
  • その時点で掲示してもユーザー操作を阻害しない
    • 例えば、代替となるような操作手順を示す場合はNoteにしない
  • 現在の情報の流れの一部ではない
    • 単に後続手順、結果、追加情報ではない

使わないケース

Noteを使わないケースがいくつか挙げられています。

  • 相互参照にはNoteを使わない
  • ユーザーが満たしておくべき前提条件や手順の掲示にNoteを使わない
    • こういった情報は前の手順とする
  • 手順の1ステップ全体をNoteに入れない
  • 正常に完了するのに必要な情報にNoteを使わない
  • 続いているテキストの一部をNoteにしない
    • 例えば、期待できる結果を示したり、前のステップを説明したりするのに使わない

見た目の例

特に組織でルールを決めていなければ、次のような見た目(HTMLの場合)が推奨されています。

出典:https://developers.google.com/style/notices (2022-06-26閲覧)

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[筆者紹介]

西野 竜太郎

Ryutaro Nishino

翻訳者/情報技術者/IT英語専門家

訳書に『血と汗とピクセル』、『リセットを押せ』、著書に『アプリケーションをつくる英語』(第4回ブクログ大賞)、『ITエンジニアのための英語リーディング』、『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』、『アプリ翻訳実践入門』など。
産業技術大学院大学修了(情報システム学修士)、東京工業大学大学院博士課程単位取得(専門は言語学)。TOEIC 985点。応用情報技術者、情報処理安全確保支援士試験合格。
東京通信大学外部講師。

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