最終更新日:2024-05-18

プログラミング英語の授業や研修を導入したいと考えているものの、具体的な教育プログラム作成に悩んでいる学校や企業が増えています。そこで、教育プログラム導入に当たって参考にしていただけそうな情報をまとめます。

プログラミングと英語4技能

プログラミング英語を教える際、いわゆる4技能のうち、どれに注力すべきなのでしょうか。プログラミングを仕事とする人(プログラマー)は、4技能を例えば図1のような場面で使っていると考えられます。

図1:プログラマーが英語4技能を使う場面の例

プログラミング実作業の場面における情報伝達は、文字によるコミュニケーションが中心となります。例えば、ソフトウェアが出すエラー・メッセージやAPIリファレンスを読んだり、マニュアルやボタン名などのUIを書いたりです。そのため、4技能の中では主にリーディングとライティングが関係します。現実にはリーディングという受信面が大部分でしょう。つまり、プログラミング時に英語で困らなくなることを教育目標にするなら、リーディングを中心にすると効率的かつ効果的です。

実際、IPA(情報処理推進機構)の調査によると、図2のように、IT企業は「英語ドキュメントの読解力」を情報系の学生に習得してもらいたいと考えています(「IT人材白書2011」p. 96[PDF])。つまり、IT企業も4技能の中では、リーディングを英語力の中心として想定しています。

リスニングやスピーキングは、プログラミング特有というより一般的なビジネス・スキルとして求められるケースが多いと考えられます。もちろん時間があればリスニングやスピーキングも習得するのが望ましいですが、プログラミングを想定して優先順位を付けるなら、リーディングが最優先で、続いてライティングだと言えるでしょう。

図2:「英語ドキュメントの読解力」の順位(IPA「IT人材白書2011」p.96より)

各場面におけるプログラム内容例

具体的には、どのような達成目標を立てたり、教材を選んだりしたらよいのでしょうか。高校、専門学校、大学、企業という場面を想定して例を挙げてみます。あくまで執筆時点における内容で、今後事例が増え次第、充実させる予定です。

【A】高校

本格的なプログラミングを学び始めてよく目にする英語は、開発環境から出されるエラーなどのメッセージのケースが多いでしょう。ところが、エラー・メッセージが英語で突然表示されると、怖い印象を受け、苦手意識を持ってしまう恐れもあります。またメッセージの内容を理解できないと先に進めない状況も多々あります。そこで、まずはメッセージ独特の英語表現を理解できるようにすることを1つの目標とすべきだと考えます。その後、生徒のレベルや必要に応じて【B】の内容から選んで教えるという構成を提案します。

リーディングの基礎となる英単語については、プログラミング必須英単語600+の「前提英単語100」と「ベーシック300」が対象です。なお、こちらの調査レポート(PDF)にあるように、高校2年〜大学受験レベル(CEFR-J Wordlistの「B1」)までの語彙リストに前提英単語100の99%、ベーシック300の67%が含まれています。もちろん学年や生徒の習熟度にもよりますが、一般的にはベーシック300までを高校生の習得目標とするのが適当でしょう。

達成目標

  • 初歩的なリーディング力

学習対象のドキュメント・タイプ

  • ソフトウェアが出すメッセージ(エラーなど)
  • 必要に応じて、プログラミング英語のドキュメント(ソースコード、APIリファレンス、マニュアル、UI)の一部

教材例

評価方法

【B】専門学校、大学(2年まで)

生徒がすでに【A】の水準に到達していることが望ましく、必要であれば【A】の教材を使った授業を設けます。

高校までの英文法がある程度理解できていれば、辞書の助けも借りつつ、プログラミング英語の多くはどうにか読めるはずです。ただし各ドキュメントには一般英語とは異なる特有の文章構成や英語表現もあります。そこで、そういった特有の文章構成や英語表現を学び、主にリーディングの力を高めることが達成目標となります。

英単語については、プログラミング必須英単語600+の「前提英単語100」と「ベーシック300」は必須とし、生徒の力に応じて「アドバンスト300」の一部までを習得目標とするのが望ましいでしょう。なお調査レポート(PDF)によると、高校2年〜大学受験レベル(CEFR-J Wordlistの「B1」)までの語彙リストに前提英単語100の99%、ベーシック300の67%、アドバンスト300の31%が含まれています。

達成目標

  • 基本的なリーディング力

学習対象のドキュメント・タイプ

  • プログラミング英語のドキュメント全般(ソースコード、APIリファレンス、マニュアル、UI)

教材例

評価方法

【C】企業、大学(3年以降)、大学院

受講者や生徒がすでに【B】の水準に到達していることが望ましいでしょう。

リーディング面では【B】をさらに進め、実際の(生の)ドキュメントを読めるようになることが達成目標となります。またライティング面では、簡単なコメントや操作手順を書いたり、変数や関数を適切に命名したりできる力を身に付けることが達成目標となります。

英単語については、プログラミング必須英単語600+の全体が習得目標となります。なお調査レポート(PDF)によると、大学受験〜大学教養レベル(CEFR-J Wordlistの「B2」)までの語彙リストにベーシック300の80%、アドバンスト300の49%が含まれています。

達成目標

  • 応用的なリーディング力
  • 基本的なライティング力

学習対象のドキュメント・タイプ

プログラミング英語のドキュメント全般(ソースコード、APIリファレンス、マニュアル、UI)

教材例

評価方法