Google Apps Script「プロジェクト作成」の英語を読む

プログラミング時に目にする英語ドキュメントをじっくり読んでいきます。1文ずつ解説しつつ、英語を英語のまま理解できるような練習をします。ここではスラッシュ・リーディングの手法を使います。

スラッシュ・リーディングとは

スラッシュ・リーディングでは英文を区切りつつ、英語の語順のままで理解します。これによって英語を脳内で日本語に変換しないため、素早く英語を読めるようになります。スラッシュで区切る場所に厳密な決まりはありませんが、「句」や「節」の単位で区切ると意味が把握しやすくなるかと思います。

その際、少しだけですが文法用語を使います。こちらのページで簡単に解説しているので、もし分からない文法用語があったら確認してみてください。


※ 同じ内容を動画でも公開しています。


今回読む英語

今回からGoogle Apps Scriptのガイドを読んでみます。簡単に使えるため人気の製品ですが、実は公式の日本語ページがありません。原文で読んで、その特徴や機能を把握してみましょう。

今回読むのは、プロジェクトの作成に関する部分(オレンジ枠内)です。

URL:https://developers.google.com/apps-script/guides/projects (2022-04-18アクセス)

著作権者はGoogleで、CC BY 4.0ライセンスで提供されているテキストです。

Portions of this page are modifications based on work created and shared by Google and used according to terms described in the Creative Commons 4.0 Attribution License.

テキスト全体

以下が今回読むテキストの全体です。末尾で音声も再生できます。

Create and delete projects

This will teach you how to create a standalone project from Google Drive and how to create a container-bound project for each of the supported containers.

Create a project from Google Drive

1. Open Google Drive.
2. At the top left, click New > More > Google Apps Script.

Create a project using the clasp command line tool

clasp is a command line tool that allows you create, pull/push, and deploy Apps Script projects from a terminal.
See the Command Line Interface using clasp guide for more details.

第1文

では、対象テキスト全体を1文ずつ読んでいきます。

Create and delete projects

このページの大きなセクションの見出しです。

createは「作成する」という動詞で、プログラミング必須英単語600+で前提英単語100に入っています。またdeleteは「削除する」という動詞で、同じくプログラミング必須英単語600+のベーシック300に入っている単語です。例文では、見出しが動詞の原形で書かれています。日本語にすると「プロジェクトを作成または削除する」となります。

ここでは動詞の原形が使われていますが、企業や製品によっては見出しは動詞のing形で書かれることもあります。例文の場合だと「creating and deleting projects」となります。ただし、Googleでは操作手順の見出しは原形で書くことをスタイルガイドで推奨しています。興味のある方はこちらのページをご覧ください:https://developers.google.com/style/headings

第2文

続いて第2文です。

This will teach you / how to create a standalone project from Google Drive / and how to create a container-bound project for each of the supported containers.

まず「This will teach you」までです。Thisが主語Sです。thisはこのセクションを指します。will teachが動詞Vです。teachはいわゆる第4文型のSVOOの形を取る代表的な動詞です。ですから、直後のyouが間接目的語O1となります。youに対して何かを教える関係です。まとめて日本語にすると「これはあなたに教える」となります。

続いて「how to」からandの前までです。これは全体として名詞の役割を果たす名詞句です。SVOOの2つめのO、直接目的語です。つまり、youに対して、how to以下を教えるという形になります。standaloneは「スタンドアロンの」という形容詞で、アドバンスト300の英単語です。また、この名詞句の意味は「Google Driveからスタンドアロンのプロジェクトを作成する方法」です。

さらに「and」以下です。andで2つの「how to 〜」同士が結ばれています。つまり、SVOOの2つめのOである直接目的語が2つあるということです。「container-bound」という単語がありますが、boundは動詞bindの過去分詞形です。bindは「バインドする」という動詞で、アドバンスト300の英単語です。バインドとは、結びつけるや関連付けるという意味です。要するに、あるコンテナーにバインドされた、つまり結び付けられたという形容詞になります。名詞句の意味としては、「サポート対象の各コンテナーについて、コンテナー・バインド型のプロジェクトを作る方法」となります。

全体をスラッシュ・リーディングするとこうです。

これはあなたに教える / Google Driveからスタンドアロンのプロジェクトを作成する方法を / サポート対象の各コンテナーについて、コンテナー・バインド型のプロジェクトを作る方法を

今回、比較的長めにスラッシュで区切っていますが、もっと短く区切っても構いません。例えば「from Google Drive」の前や、「for each of the supported containers」の前でも区切れます。どちらも副詞句のかたまりです。

この第2文を日本語として整えると、「ここでは、Google Driveからスタンドアロンのプロジェクトを作成する方法と、サポート対象の各コンテナーについてコンテナー・バインド型のプロジェクトを作る方法を説明します」となります。

第3文

続いて第3文です。

Create a project from Google Drive

大きなセクションの中にある、小さなセクションの見出しです。前述のように、操作手順の見出しには動詞の原形が使われています。日本語にすると「Google Driveからプロジェクトを作成する」となります。

今回スラッシュの区切りはありませんが、fromの前で区切っても構いません。from以下が副詞句のまとまりになります。

第4文

次に第4文です。

1. Open Google Drive.

ここから操作手順の各ステップに入ります。Openと動詞で始まっていますが、これは命令形になります。先ほど、見出しには動詞の原形が使われると説明しました。どちらも一見同じに見えますが、命令形はユーザーに対する操作指示なので注意してください。命令形なので「Google Driveを開け」です。丁寧に言うと「開いてください」です。

なお、日本語ではこのように「〜してください」と丁寧な表現が使われることがありますが、英語の場合は例文のようにpleaseなしの命令形で書かれるのが一般的です。

第5文

第5文で、ステップの2番目です。

2. At the top left, / click New > More > Google Apps Script.

まずカンマの前まで見てみます。「At the top left」は「左上で」の意味です。次のclickにかかる副詞句になります。

日本語だと「左上」のように、まず左右、続いて上下の順に書きます。しかし英語の場合、「top left」のように、まず上下、続いて左右の順番になります。特に英語を書くときに注意しましょう。

また「左上で」と、場所を先に書いています。これはユーザーが操作をするとき、まずどこで操作をするのかが分からないと操作ができません。そのため場所を表す副詞句が前に出されています。Googleの英文スタイルガイドでもそのように書くとしています。もし興味があればこちらのページをご覧ください:https://developers.google.com/style/procedures#steps-that-say-where-to-complete-a-task

続いて、click以下です。clickは「クリックする」という動詞で、ベーシック300の英単語です。次の「New」からがclickの目的語となります。どれもボタンのラベルです。その間にある大なり記号は、この順にクリックするという意味です。日本語では「右矢印(→)」が使われることがありますが、英語ではこの大なり記号です。日本語は「『新規』→『その他』→『Google Apps Script』とクリックせよ」となります。

スラッシュ・リーディングをまとめます。

左上で / 「新規」→「その他」→「Google Apps Script」とクリックせよ

日本語として整えると、「左上で、『新規』→『その他』→『Google Apps Script』とクリックします」となります。

第6文

Create a project / using the clasp command line tool

次に第6文です。小さなセクションの見出しです。見出しなので、やはり動詞の原形から始まっています。一般的な文の構造をしていない点に注意してください。主語がありません。

まずはusingの前までを見てみます。Createが動詞、a projectが目的語で「プロジェクトを作成する」となります。

using以下はcreateを修飾する副詞句です。「claspコマンド・ライン・ツールを使って」の意味です。

スラッシュ・リーディングをまとめます。

プロジェクトを作成する / claspコマンド・ライン・ツールを使って

日本語として整えると「claspコマンド・ライン・ツールを使ってプロジェクトを作成する」です。

第7文

続いて第7文です。

clasp is a command line tool / that allows you create, pull/push, and deploy Apps Script projects from a terminal.

まずthatの前までです。claspは固有名詞で主語Sです。isが述語動詞Vです。そしてa command line toolが名詞句で補語Cとなります。つまり「claspはコマンド・ライン・ツールだ」という意味です。

その後のthatで始まる節は、直前の名詞を修飾している形容詞節です。まずthatは代名詞の扱いなので主語S、allowsが動詞V、youが目的語Oです。allowは「可能にする、許可する」という動詞で、ベーシック300です。「S allow O to 〜」という形で、「SはOが〜するのを可能にする」の意味になります。分かりやすい日本語にすると「SによってOは〜できる」となります。ただ、この例文ではtoが脱落していて、動詞原形が用いられています。

また、pullは「プルする、取得する」という動詞でベーシック300、pushは「押す、プッシュする」という動詞で同じくベーシック300です。pullとpushの間にあるスラッシュは、ここでは「または」の意味です。さらにdeployは「配備する、デプロイする」という動詞でアドバンスト300の英単語です。terminalは「ターミナル、端末装置」という名詞です。

つまりthat節をまとめると「これにより、あなたはターミナルからApps Scriptプロジェクトを作成、プルまたはプッシュ、およびデプロイできる」となります。後半はやや長いので、例えば「from a terminal」の前で区切っても構いません。

全体をスラッシュ・リーディングします。

claspはコマンド・ライン・ツールだ / これにより、あなたはターミナルからApps Scriptプロジェクトを作成、プルまたはプッシュ、およびデプロイできる

日本語として整えると、「claspはコマンド・ライン・ツールで、これによりターミナルからApps Scriptプロジェクトを作成、プルまたはプッシュ、およびデプロイできます」となります。

第8文

最後の第8文です。

See the Command Line Interface using clasp guide / for more details.

forの前で区切ります。Seeは動詞Vで命令形になっています。その後はウェブページのタイトルで、ひとまとまりの目的語Oになります。つまり「Command Line Interface using clasp guideを見よ」という意味です。

続く「for more details」は文頭のSeeを修飾する副詞句です。detailは「詳細」という名詞で、前提英単語100に入っています。detailsと複数形になっていますが、「詳細」や「詳しい情報」の意味では複数形で使うのが一般的です。また、「for details」や「for more details」という形でよく登場し、「詳しくは」や「詳細は」を表します。

全体をスラッシュ・リーディングしてみます。

Command Line Interface using clasp guideを見よ / 詳しくは

日本語として整えると、「詳しくはCommand Line Interface using clasp guideを参照してください」となります。

英単語まとめ

今回登場した英単語をまとめます。(「ベーシック300」などはプログラミング必須英単語600+の分類)

  • create【動詞】作成する(前提英単語100)
  • delete【動詞】削除する(ベーシック300)
  • standalone【形容詞】スタンドアロンの(アドバンスト300)
  • bind【動詞】バインドする(アドバンスト300)
  • click【動詞】クリックする(ベーシック300)
  • allow【動詞】可能にする、許可する(ベーシック300)
  • pull【動詞】プルする、取得する(ベーシック300)
  • push【動詞】押す、プッシュする(ベーシック300)
  • deploy【動詞】配備する、デプロイする(アドバンスト300)
  • terminal【名詞】ターミナル、端末装置
  • detail【名詞】詳細(前提英単語100)
  • for details 詳しくは、詳細は

[筆者紹介]

西野 竜太郎

Ryutaro Nishino

翻訳者/情報技術者/IT英語専門家

訳書に『血と汗とピクセル』、『リセットを押せ』、著書に『アプリケーションをつくる英語』(第4回ブクログ大賞)、『ITエンジニアのための英語ライティング』、『ITエンジニアのための英語リーディング』、『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』など。
産業技術大学院大学修了(情報システム学修士)、東京工業大学大学院博士課程単位取得(専門は言語学)。TOEIC 985点。
東京通信大学外部講師。

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