プログラミング時に目にする英語ドキュメントをじっくり読んでいきます。1文ずつ解説しつつ、英語を英語のまま理解できるような練習をします。ここではスラッシュ・リーディングの手法を使います。
スラッシュ・リーディングとは
スラッシュ・リーディングでは英文を区切りつつ、英語の語順のままで理解します。これによって英語を脳内で日本語に変換しないため、素早く英語を読めるようになります。スラッシュで区切る場所に厳密な決まりはありませんが、「句」や「節」の単位で区切ると意味が把握しやすくなるかと思います。
その際、少しだけですが文法用語を使います。こちらのページで簡単に解説しているので、もし分からない文法用語があったら確認してみてください。
※ 同じ内容を動画でも公開しています。
今回読む英語
前回に続き、Google Apps Scriptのガイドを読んでいきます。公式の日本語ページがないので、原文で読んで特徴や機能を把握してみましょう。
今回読むのは、「デプロイの作成と管理」に関するページの最初の部分です。
URL:
https://developers.google.com/apps-script/concepts/deployments (2022-07-26アクセス)
著作権者はGoogleで、CC BY 4.0ライセンスで提供されているテキストです。
Portions of this page are modifications based on work created and shared by Google and used according to terms described in the Creative Commons 4.0 Attribution License.
テキスト全体
以下が今回読むテキストの全体です。末尾で音声も再生できます。
An Apps Script project deployment is a version of the script that is made available for use as a web app, add-on, or API executable. By creating and managing deployments, you can iterate on your code, keep track of your changes, and control the exact code version your users have access to.
There are two types of deployments:
- Head deployments, which are always synced to the current project code.
- Versioned deployments, which are connected to a specific project version.
第1文
では、対象テキスト全体を1文ずつ読んでいきます。
An Apps Script project deployment is a version of the script / that is made available for use / as a web app, add-on, or API executable.
まず冒頭からthatの手前までです。An Apps Script project deploymentという名詞のかたまりが主語でS、isが動詞でV、a version of the scriptが主語の補語でCです。ここまででSVCのいわゆる第2文型であり、この文の主節となります。deploymentは「配備、デプロイ」という名詞で、プログラミング必須英単語600+でアドバンスト300に入っている英単語です。またversionは「バージョン、版」という名詞で、ベーシック300の英単語です。日本語にすると、「Apps Scriptプロジェクトのデプロイはスクリプトの一バージョンだ」となります。ここではaを「一」(いち)と明示しています。
続いてthatからasの前までです。that以下は従属節で、かつ直前の名詞を修飾する形容詞節でもあります。節なので内部に主語と動詞があります。関係代名詞thatが主語で、すぐ前のa version of the scriptを指します。主語の扱いなので主格の関係代名詞です。is madeが動詞で、受け身の形になっています。続くavailableは「利用可能な、入手可能な」という形容詞で、ベーシック300の英単語です。ここは関係が少々分かりにくいと思います。受動態を能動態にして考えると、「主語(S) makes 目的語(O) available」です。つまりSVOCのいわゆる第5文型です。makeが第5文型の場合、「OをCにする」という意味です。実際は受け身の形なので、日本語にすると「これは利用可能にされている」です。
最後のas以下です。asは前置詞で「〜として」の意味です。またexecutableはアドバンスト300の英単語で、「実行可能な」という形容詞または「実行可能ファイル」という名詞です。ここではファイルというより、プログラム程度の意味になります。Googleでは「実行可能API」という訳を当てています。つまり日本語にすると「ウェブアプリ、アドオン、または実行可能APIとして」です。
全体をスラッシュ・リーディングするとこうです。
Apps Scriptプロジェクトのデプロイはスクリプトの一バージョンだ / これは利用可能にされている / ウェブアプリ、アドオン、または実行可能APIとして
日本語として整えると、「Apps Scriptプロジェクトのデプロイはスクリプトの一バージョンであり、これはウェブアプリ、アドオン、または実行可能APIとして利用できるようになっています」となります。
第2文
By creating and managing deployments, / you can iterate on your code, / keep track of your changes, / and control the exact code version your users have access to.
冒頭のbyからyouの前までです。byとing形の動名詞で、「〜することによって」の意味になります。manageは「管理する」という動詞で、ベーシック300です。つまり日本語にすると「デプロイを作成および管理することによって」となります。このかたまりには主語と動詞の両方が含まれないので、節ではなく、句(副詞句)です。
次にyou以下です。youが主語でSです。続いてcanという助動詞の後に3つの動詞がandで並列されています。まずiterateは「反復する、繰り返す」という動詞でアドバンスト300の英単語です。直後に目的語が見当たらないため自動詞扱いです。「on your code」は「コード上で」なので全体では「コード上で繰り返し開発する」といった意味です。ここでいったんスラッシュで切ってみます。
続く動詞はkeepです。「keep track of 〜」は「〜(の状況)を把握しておく」という熟語です。またここのchangesは動詞ではなく、名詞です。名詞なので「変更点」の意味です。複数形でsがある点にも注意しましょう。つまりkeep track of your changesで「変更点を把握しておく」です。ここでいったん切ってみます。
最後の動詞はcontrolです。「制御する」や「管理する」という動詞で、ベーシック300の英単語です。「control the exact code version」までで「コードの厳密なバージョンを管理する」となります。その後の「your users have access to」ですが、yourの前で関係代名詞whichが省略されています。つまりここから直前の名詞「the exact code version」を修飾する形容詞節になっています。なおaccessは「アクセス」や「利用」という名詞で、ベーシック300です。まとめるとcontrol以下は、「ユーザーが利用するコードの厳密なバージョンを管理する」です。
全体をスラッシュ・リーディングするとこうです。
デプロイを作成および管理することによって / あなたはコード上で繰り返し開発できる / 変更点を把握しておける / ユーザーが利用するコードの厳密なバージョンを管理できる
日本語として整えると、「デプロイを作成および管理することによって、コード上で繰り返し開発したり、変更点を把握したり、ユーザーが利用するコードの厳密なバージョンを管理したりできます」となります。
第3文
続いて第3文です。短いのでスラッシュで区切りません。
There are two types of deployments:
特殊なThere構文で、主語Sはtwo types of deployments、動詞Vはareです。つまり「2つの種類のデプロイがあります」という意味です。
注目したいのは末尾のコロンです。これはすぐ下に一覧あるいはリストが続くときに使われるコロンです。
第4文
続いて第4文です。
Head deployments, / which are always synced to the current project code.
コロンで導かれた一覧にある1番目の項目です。まずwhichの前までです。「ヘッドのデプロイ」という名詞です。
次のwhichは関係代名詞で、ここから先行詞である直前の名詞を修飾する形容詞節が始まります。特にwhichの前にカンマが置かれると関係代名詞は「非制限用法」となり、先行詞を補足的に説明する役割を果たします。この形容詞節ではwhichが主語、are syncedが動詞で受け身の形をしています。syncは「synchronize」の略で、「同期する」というアドバンスト300の動詞です。to以下は「現在のプロジェクトのコードに」の意味で、動詞を修飾する副詞句です。
全体のスラッシュ・リーディングをまとめます。
ヘッドのデプロイ / これは常に現在のプロジェクトのコードに同期される
一応日本語として整えると、「ヘッドのデプロイで、現在のプロジェクトのコードに常に同期される」です。
第5文
最後の第5文です。
Versioned deployments, / which are connected to a specific project version.
これは第4文とほぼ同じ構造なので、説明は単語を中心に簡単にします。
まずversionedは「バージョン付きの」という形容詞です。またconnectは「接続する」というベーシック300の動詞ですが、ここでは「結び付ける」程度の意味です。最後にspecificは「特定の」という形容詞で、こちらもベーシック300の英単語です。
スラッシュ・リーディングするとこうです。
バージョン付きのデプロイ / これは特定のプロジェクト・バージョンと結び付けられている
日本語として整えると、「バージョン付きのデプロイで、特定のプロジェクト・バージョンと結び付けられている」です。
英単語まとめ
今回登場した英単語をまとめます。(「アドバンスト300」などはプログラミング必須英単語600+の分類)
- deployment【名詞】配備、デプロイ(アドバンスト300)
- version【名詞】バージョン、版(ベーシック300)
- available【形容詞】利用可能な、入手可能な(ベーシック300)
- executable【形容詞/名詞】実行可能な/実行可能ファイル(アドバンスト300)
- iterate【動詞】反復する、繰り返す
- keep track of 〜【熟語】〜を追跡する
- change【名詞】変更点(動詞は前提英単語 100)
- control【動詞】制御する、管理する(ベーシック300)
- access【名詞】アクセス、利用(ベーシック300)
- sync【動詞】同期する(synchronizeの略。アドバンスト300)
- versioned【形容詞】バージョン付きの
- connect【動詞】接続する(ベーシック300)
- specific【形容詞】特定の(ベーシック300)
[筆者紹介]
西野 竜太郎
翻訳者/情報技術者
著書に『アプリケーションをつくる英語』(第4回ブクログ大賞)、『ITエンジニアのための英語ライティング』、『ITエンジニアのための英語リーディング』、『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』など。
産業技術大学院大学修了(情報システム学修士)、東京工業大学大学院博士課程単位取得(専門は言語学)。TOEIC 985点。
東京通信大学外部講師。
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