Google Apps Script「概要」の英語を読む

プログラミング時に目にする英語ドキュメントをじっくり読んでいきます。1文ずつ解説しつつ、英語を英語のまま理解できるような練習をします。ここではスラッシュ・リーディングの手法を使います。

スラッシュ・リーディングとは

スラッシュ・リーディングでは英文を区切りつつ、英語の語順のままで理解します。これによって英語を脳内で日本語に変換しないため、素早く英語を読めるようになります。スラッシュで区切る場所に厳密な決まりはありませんが、「句」や「節」の単位で区切ると意味が把握しやすくなるかと思います。

その際、少しだけですが文法用語を使います。こちらのページで簡単に解説しているので、もし分からない文法用語があったら確認してみてください。


※ 同じ内容を動画でも公開しています。


今回読む英語

今回からGoogle Apps Scriptのガイドを読んでみます。簡単に使えるため人気の製品ですが、実は公式の日本語ページがありません。原文で読んで、その特徴や機能を把握してみましょう。

今回読むのは、「概要」に関するページの最初の部分です。

URL:https://developers.google.com/apps-script/overview (2022-03-21アクセス)

著作権者はGoogleで、CC BY 4.0ライセンスで提供されているテキストです。

Portions of this page are modifications based on work created and shared by Google and used according to terms described in the Creative Commons 4.0 Attribution License.

テキスト全体

以下が今回読むテキストの全体です。末尾で音声も再生できます。

Google Apps Script overview

Google Apps Script is a rapid application development platform that makes it fast and easy to create business applications that integrate with Google Workspace. You write code in modern JavaScript and have access to built-in libraries for favorite Google Workspace applications like Gmail, Calendar, Drive, and more. There’s nothing to install—we give you a code editor right in your browser, and your scripts run on Google’s servers.

If you’re new to JavaScript, Codecademy offers a number of JavaScript courses. (Note that these courses weren’t developed by and aren’t associated with Google.)

第1文

では、対象テキスト全体を1文ずつ読んでいきます。

Google Apps Script overview

このページのタイトルです。「Google Apps Script」は固有名詞で、最初の単語が大文字で書かれています。

その後の「overview」は「概要」という名詞です。プログラミング必須英単語600+のアドバンスト300に入っている単語です。英語ドキュメントの目次や見出しなどで非常によく使われるので、ぜひ覚えておきたい言葉です。

この概要で示される内容をしっかり読んで理解しておくと、そのドキュメントに自分に必要な内容が書かれているかを把握できます。余計な部分まで読んで時間を無駄にせずに済むので、概要に書かれている内容は理解しておきたいところです。

第2文

今回のスラッシュ・リーディング用にスラッシュを入れています。前述のようにスラッシュ・リーディングの区切り方に厳密な決まりはなく、これ以外の区切り方はあります。

Google Apps Script is a rapid application development platform / that makes it fast and easy to create business applications / that integrate with Google Workspace.

まずthatの前までのかたまりです。「Google Apps Script」が主語(S)、「is」が動詞(V)」、「a rapid application development platform」までが主語の補語(C)なる名詞句です。developmentは「開発」という名詞で、プログラミング必須英単語600+でベーシック300に入っています。rapidは「素早い」という形容詞です。つまり、ここまでで「Google Apps Scriptは素早いアプリケーション開発プラットフォームだ」だと解釈できます。

さらに、その後の「that makes it fast and easy to create business applications」は直前のplatformまでの名詞句を修飾しています。形容詞節です。節なので、内部にSとVが含まれています。つまり、関係代名詞であるthatがS、makeがVです。またitは形式目的語で、実質的な目的語はto以下となります。「これはビジネス・アプリケーションの作成を迅速かつ簡単にする」となります。

最後の「that integrate with Google Workspace」です。すぐ前にあるbusiness applicationsという名詞句を修飾しています。形容詞節です。節なのでやはり内部にSVがあり、関係代名詞thatがS、integrateがVです。integrateは「統合する」という動詞です。日本語は「これはGoogle Workspaceと統合する」となります。

全体をスラッシュ・リーディングするとこうです。

Google Apps Scriptは素早いアプリケーション開発プラットフォームだ / これはビジネス・アプリケーションの作成を迅速かつ簡単にする / これはGoogle Workspaceと統合する

英語を素早く読むには、英語を英語のまま理解できるように訓練する必要があります。このスラッシュで区切ったかたまり程度に理解して読めると望ましいと思います。一応、日本語として整えておくと、「Google Apps Scriptは、Google Workspaceと統合する、ビジネス・アプリケーションの作成を迅速かつ簡単にする素早いアプリケーション開発プラットフォームです」となります。

第3文

You write code in modern JavaScript / and have access to built-in libraries / for favorite Google Workspace applications / like Gmail, Calendar, Drive, and more.

まず「You write code in modern JavaScript」までです。「You」が主語(S)で、writeが動詞(V)、「code」が目的語(O)、「in modern JavaScript」がwriteを修飾する副詞句です。modernは「最新の」や「現代的な」という形容詞です。つまり「あなたは最新のJavaScriptでコードを書く」です。

それに続く部分は「and」で結ばれています。主語は省略されており、最初に出てきたYouです。haveは動詞で、次の「access」は目的語となる名詞で、「利用」や「アクセス」の意味です。ベーシック300に入っています。そして「to built-in libraries」まではaccessを修飾する形容詞句です。built-inは「内蔵の」や「組み込まれた」という形容詞です。つまり「そして内蔵のライブラリーを利用できる」です。

続く「for favorite Google Workspace applications」は直前のbuilt-in librariesを修飾しているので、形容詞句です。favoriteは「人気の」や「お気に入りの」という形容詞です。まとめると「人気のGoogle Workspaceアプリケーション向けの」です。

最後の「like Gmail, Calendar, Drive, and more.」はすぐ前の名詞を修飾しています(形容詞句)。なおこのlikeは前置詞で、「〜のような」と例を挙げる際に使われます。またmoreは代名詞で「もっと多くのこと」の意味です。ここでは「など」とすればよいでしょう。つまりは「Gmail、Calendar、Driveなどのような」です。

全体のスラッシュ・リーディングをまとめます。

あなたは最新のJavaScriptでコードを書く / そして内蔵のライブラリーを利用できる / 人気のGoogle Workspaceアプリケーション向けの / Gmail、Calendar、Driveなどのような

この文も一応日本語として整えてみます。「最新のJavaScriptでコードを書き、Gmail、Calendar、Driveなどのような人気のGoogle Workspaceアプリケーション向けの内蔵ライブラリーを利用できます」です。

第4文

There’s nothing to install / —we give you a code editor / right in your browser, / and your scripts run on Google’s servers.

最初の「There’s nothing to install」です。いわゆるThere is構文で、isが動詞、nothingが主語です。「to install」はnothingを修飾する形容詞句です。installは「インストールする」という動詞で、ベーシック300の英単語です。全体では「インストールするものはなにもない」です。

直後にダッシュ(―)がありますが、これ以降は前の部分の説明になっています。続いて「we give you a code editor」の部分です。まずweが主語(S)です。weは会社の場合は「当社」を表します。giveが動詞(V)、youが間接目的語(O1)で与える相手、「a code editor」が直接目的語(O2)で与えるものです。いわゆるSVOOの第4文型です。giveはこの文型を取る代表的な動詞です。全体で「当社はコード・エディターを提供する」です。

次は「right in your browser」です。このrightは「正しい」や「右の」の意味でなく、「まさに」や「ちょうど」という副詞なので注意しましょう。ちなみにyourは「あなたの」ですが、日本語にする際は「お使いの」という表現がぴったりのことがあります。まとめると「まさにあなたのブラウザー内に」という意味になります。

最後の「and your scripts run on Google’s servers.」です。andは接続詞で、前の節を同じレベルでつないでいます。「your scripts」が主語(S)、runが動詞(V)です。runは他動詞の場合は「実行する」の意味です。プログラミング必須英単語600+で前提英単語100に入っています。ただここでは自動詞で、「動く」や「動作する」です。続く「on Google’s servers」は動詞runを修飾する副詞句です。まとめると「そしてスクリプトはGoogleのサーバー上で動作する」です。

全体のスラッシュ・リーディングをまとめます。

インストールするものはなにもない / 当社はコード・エディターを提供する / まさにあなたのブラウザー内に / そしてスクリプトはGoogleのサーバー上で動作する

日本語として整えると、「インストールするものはなにもありません。まさにお使いのブラウザー内にコード・エディターを提供し、スクリプトはGoogleのサーバー上で動作します」となります。

第5文

If you’re new to JavaScript, / Codecademy offers a number of JavaScript courses.

「If」からは条件を表す副詞節です。そのためここで区切っています。newという形容詞を人に使う場合、「馴染みがない」や「未経験の」という意味になります。つまり、「もしあなたがJavaScriptを使ったことがなければ」です。

次の「Codecademy」からが主節になります。Codecademyが主語(S)、offersが動詞(V)、「a number of JavaScript courses」が目的語(O)です。「a number of 〜」は「多くの〜」という意味です。よく似た表現に「the number of 〜」があります。こちらは「〜の数」の意味です。aかtheかで意味が違ってくるので注意しましょう。つまりこの部分は「Codecademyが多くのJavaScriptコースを提供する」です。

スラッシュ・リーディングをまとめます。

もしあなたがJavaScriptを使ったことがなければ / Codecademyが多くのJavaScriptコースを提供する

日本語として整えると、「もしあなたがJavaScriptを使ったことがなければ、Codecademyが多くのJavaScriptコースを提供しています」となります。

第6文

(Note / that these courses weren’t developed by and aren’t associated with Google.)

Noteは「〜に注意する」という動詞です。プロラミング必須英単語600+のベーシック300に入っています。「Note that 〜」の形でよく用いられ、動詞から始まる命令文なので「〜に注意せよ」です。thatの後にはSとVが含まれる節(従属節)が入ります。

そのthatで始まる節を見てみましょう。「these courses」が主語(S)、andで結ばれた「weren’t developed」と「aren’t associated」の両方が動詞(V)になります。developは「開発する」や「作成する」という動詞、associateは「関連する」や「提携する」という動詞です。前置詞byの直後には何もないのに、withの後にはGoogleがあります。これは両方ともGoogleであるため、withの後だけが残り、byの後では省略されています。つまり「これらのコースは、Googleが開発したわけでもGoogleと提携しているわけでもない」です。

スラッシュ・リーディングをまとめます。

注意せよ / これらのコースは、Googleが開発したわけでもGoogleと提携しているわけでもない

日本語として整えると、「これらのコースは、Googleが開発したわけでもGoogleと提携しているわけでもない点にご注意ください」になります。

英単語まとめ

今回登場した英単語をまとめます。(「アドバンスト300」などはプログラミング必須英単語600+の分類)

  • overview【名詞】概要(アドバンスト300)
  • development【名詞】開発(ベーシック300)
  • rapid【形容詞】素早い
  • integrate【動詞】統合する
  • modern【形容詞】最新の、現代的な
  • access【名詞】利用、アクセス(ベーシック300)
  • built-in【形容詞】内蔵の、組み込まれた
  • favorite【形容詞】人気の、お気に入りの
  • install【動詞】インストールする(ベーシック300)
  • right【副詞】まさに、ちょうど
  • run【動詞】[他動詞で]実行する(前提英単語100)、[自動詞で]動作する
  • a number of 〜 多くの〜
  • the number of 〜 〜の数
  • note【動詞】注意する(ベーシック300)

[筆者紹介]

西野 竜太郎

Ryutaro Nishino

翻訳者/情報技術者

著書に『アプリケーションをつくる英語』(第4回ブクログ大賞)、『ITエンジニアのための英語ライティング』、『ITエンジニアのための英語リーディング』、『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』など。
産業技術大学院大学修了(情報システム学修士)、東京工業大学大学院博士課程単位取得(専門は言語学)。TOEIC 985点。
東京通信大学外部講師。

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