英文スタイルガイド解説(25):セミコロンの使い方

日本語ネイティブ向け英語スタイルガイドの「IT英語スタイルガイド」も公開しています。まとまった情報が必要な場合にご参照ください。

Googleが公開している開発者向け英文スタイルガイドから項目を1つ取り上げて紹介します。スタイルガイドは基本的には書く際に利用されますが、読む際にも参考になります。

記事の英語難易度は「中〜上級」です。


今回はセミコロン(;)の使い方です。

URL: https://developers.google.com/style/semicolons (2022-02-20閲覧)

なおコロン(:)の使い方については、こちらの記事をご覧ください。

補足

2022年9月5日に、セミコロンはなるべく使用を避けるとGoogle英文スタイルガイドに改訂が入りました。音声読み上げソフトで対応が難しいというアクセシビリティー上の問題があるようです。

2つの独立節の間で

セミコロン(;)は2つの独立節をつなげるのに使います。

英文法用語が出てきたので簡単に解説します。まず「節」とは、主語(S)と述語動詞(V)が含まれるかたまりです。また「独立」とはそれ自体として成立するという意味なので、「独立節」とはそれ自体で文に成れるかたまりです。ですから「1文=1独立節」のケースは多々あります。

この独立節同士をつなげるのにセミコロンが使われます(日本語訳も分かりやすいようセミコロンを使用)。

以降の英語例文はGoogleのものを使用しています。

  • The Earth Engine image must have exactly one or three bands when exporting to GME; other images cause the export to fail.
    • [訳]GMEへのエクスポート時、Earth Engineの画像には、きっちり1つまたは3つのバンドが必要ですそれ以外の画像ではエクスポートが失敗します。

上記の例は、セミコロンを使わずに(ピリオドを使って)2つの文にしても英語として成立します。しかしわざわざセミコロンを使うのは、独立節同士の間に何かしらの関連があることを示したいからです。例の場合、前の独立節から発生する結果(失敗してしまう)を後の独立節で説明しています。

なお、後の独立節が「other」と小文字で始まっている点に注意してください。つまり1つの文が2つの独立節から成立しています。

接続副詞の前

独立節同士をつなぐケースの一種ですが、後の独立節の直前に接続副詞が置かれる形です。

「接続副詞」とは、also、therefore、then、howeverなど、副詞ではあるが独立節同士をつなぐ言葉です。接続詞(and、butなど)は語同士や句同士もつなげますが、接続副詞は独立節同士しかつなげません。

  • The style of this button is up to you; however, you must still follow branding guidelines.
    • [訳]このボタンのスタイルを決めるのはあなたですしかし、やはりブランディング・ガイドラインに従う必要があります。

複雑な項目や長い項目の区切りで

複雑な項目や長い項目を区切る際に、カンマ(,)ではなくセミコロンを使うとしています。

複雑な項目

文の中でレベルの異なる項目を並べるとき、カンマ(,)だけしか使えないとレベルの違いが不明瞭になります。その場合、大きな区切りとしてセミコロンを使います。

次の例文では、同じレベルの項目3つがセミコロンで区切られています。下線部分(筆者追加)です。

  • Review your document one more time, checking for the following: present tense and active voice; typos, punctuation, and grammar; and whether you can shorten anything.

セミコロンで区切られた3つは次の(A)〜(C)です。

  • (A)present tense and active voice
  • (B)typos, punctuation, and grammar
  • (C)whether you can shorten anything

(A)と(B)の中には、カンマやandで区切られた項目が入っています。例えば(B)はtypos、punctuation、grammarの3つがカンマで区切られています。

つまりレベルの違う項目がある場合、大きな方をセミコロンで区切り、小さな方をカンマで区切るということです。

長い項目

次の例文では、コロンの後にwhatで始まる項目が3つ並べられています。どれも長めなので、セミコロンで区切られています。下線部分です(筆者追加)。

  • If you don’t have time, then focus on the improvements that will have the greatest benefit: what matters most to your users; what is most important to fix; and what is easy or feasible to fix in the available time.

このように、Googleのスタイルガイドでは複雑な項目や長い項目をセミコロンの使用例として挙げています。しかしライティングをする場合、文ではなくリストにした方が読者にとって読みやすいことがあります。無理にセミコロンを使って長く複雑な文にするのではなく、リスト化も検討した方がよいでしょう(記事)。


(ライセンス表示: Portions of this page are modifications based on work created and shared by Google and used according to terms described in the Creative Commons 4.0 Attribution License.)


[筆者紹介]

西野 竜太郎

Ryutaro Nishino

翻訳者/情報技術者

著書に『アプリケーションをつくる英語』(第4回ブクログ大賞)、『ITエンジニアのための英語ライティング』、『ITエンジニアのための英語リーディング』、『ソフトウェア・グローバリゼーション入門』など。
産業技術大学院大学修了(情報システム学修士)、東京工業大学大学院博士課程単位取得(専門は言語学)。TOEIC 985点。
東京通信大学外部講師。

リンク:ウェブサイト

Profile Picture